一般社団法人日本肉腫学会 一般社団法人日本臨床肉腫学会

新型コロナウイルス感染症に関する特設ページを更新しました(2020.04.20版)

全国の肉腫患者・ご家族様、肉腫医療に関わる医療者の皆様へ
まず、東京都および日本全国の感染の現状と医療体制に関わる死亡者数の現状を、
ほぼ同じ医療レベルをもつと考えられるアメリカ合衆国およびドイツと比較してお示しします。
 

Situation Note (1)

Situation Note (1)

東京都の4月11日と17日の1日当たりの感染確認者数はこれまで最も多く、それぞれ人口10万人あたり1.42人(実数値 197人)と1.45人(実数値201人)で、これは、ドイツの3月17日(1.42人)、アメリカの3月21日(1.46人)の数値に匹敵します。日本全国では、最も多い4月12日でも0.57人(実数値 719人)でまだかなり低い値です。






 

Situation Note (2)

Situation Note (2)

1日ごとの死亡者数を比較すると、ドイツとアメリカではほぼ同じ時期3月20-25日に死亡者数が急増していることがわかります。この”Over Shoot”はSituation Note (1)の人口10万人あたり1日あたりの感染確認者数が2.0-3.0人(東京都の実数値に換算すると1日あたり278-417人、日本全国では2,526-3,790人)を超えるポイントで起こることがわかります。この状態になると医療体制がひっ迫してきます。1日あたりの死亡者数では、人口10万人あたり0.04-0.06人(東京都の実数値に換算すると1日あたり6-8人、日本全国では51-76人)が境目になります。ドイツとアメリカの状況から推測すると、東京都の1日あたりの感染確認者数が4月11日(1.42人/10万人;実数値 197人)または4月17日(1.45人/10万人;実数値201人)から5-8日間(つまり、4月16-25日までの期間)にどのように推移するかが重要です。4月19日現在は東京都の医療体制は「持ちこたえている」ものと考えられます。






 

Situation Note (3)

Situation Note (3)

ドイツとアメリカで死亡者数が急増した3月20-25日のポイントは人口10万人あたりの累積死亡者数の曲線を見ても明らかです。ドイツは死亡者数の抑制に成功していることがわかります。東京都も日本全国も死亡者数の低さは際立っており、4月19日現在は、我が国の医療体制が十分機能していることがわかります。






Q&A


Q. 肉腫患者です。経過観察で通っている病院で医療従事者と入院患者の院内感染が発生し、現在新規患者の受け入れが中止されています。再診患者は受け入れているようですが、受診すべきでしょうか。


A. 現在治療中でない方は、主治医の先生と相談して、1か月程度受診を先送りし、新たな感染者が発生しないかどうかを確認して受診するのが好ましいでしょう。

 抗がん剤などの治療中の方は、アルコール消毒、手洗い、うがい、マスクなど感染対策に十分注意して治療を継続することが望ましいと思われます。




Q. 中国上海在住の肉腫患者です。現在日本で肉腫の手術を受けることができるでしょうか。


A. 本国の入国制限に加え、日本国内のほとんどの病院で、2週間以内に中国滞在歴のある患者様の受け入れが中止されています。オンライン診療でのセカンドオピニオンの対応は可能です。現地の主治医の先生と治療方法についての相談・アドバイスも可能です。




Q. 抗がん剤治療中の肉腫患者です。病院での感染がとても心配です。少なくとも緊急事態宣言が解除されるまで治療を延期して自宅にいるべきでしょうか。また、がん患者は感染した場合、重症化や死亡リスクが高いのでしょうか。


A. フランスのFrench Sarcoma Groupは声明で、抗がん剤・手術など肉腫患者の治療は延期せず継続することが望ましいと発表しています。アルコール消毒、手洗い、うがい、マスクなど厳重な感染対策を行って、主治医の先生と受診について相談して下さい。緊急事態宣言でも治療のための病院の受診は制限されていません。受診の地域での感染状況(situation)を考慮してください。

 肉腫についてのデータはありませんが、治療中のがん患者さんが感染した場合の重症化と死亡についてのデータがイタリアと中国から発表されています。イタリアでは全死亡者の20%が治療中のがん患者であったと報告されています。

 中国武漢では、平均年齢65歳の28例のがん患者(肺がん、食道がん、乳がん、喉頭がん、肝細胞がん、前立腺がん等)の感染者について発表されています。死亡率は29%で、過去14日以内にがん治療(抗がん剤、放射線治療、分子標的薬治療、免疫治療)を受けた患者は、統計学的に有意に重症化・重篤化(ICU管理;酸素吸入、人工呼吸器)のリスクが高かったと報告されています。


【参考文献】
Zhang L, Zhu F, Xie L, Wang C, Wang J, Chen R, Jia P, Guan HQ, Peng L, Chen Y, Peng P, Zhang P, Chu Q, Shen Q, Wang Y, Xu SY, Zhao JP, Zhou M, Clinical characteristics of COVID-19-infected cancer patients: A retrospective case study in three hospitals within Wuhan, China, Annals of Oncology (2020), doi: https://doi.org/10.1016/j.annonc.2020.03.296.


 別の中国の研究グループは、中国全土の575病院の1590人の感染者を分析し、18人ががん患者(平均年齢63歳)であったと報告しています。この比率1.1%は、中国でのがんの罹患率0.29%より高い数値です。18人中17人の患者(94%)がCT所見でより重度の肺炎を示しました。18人中7人(39%)がICUで人工呼吸器管理が必要で、過去1か月以内に抗がん剤や手術を受けた4人の患者では、3名(75%)がICU管理が必要な重症者でした。これはがんのない人の8%に比べて極めて高い数値でした。


【参考文献】
Wenhua Liang†‡, Weijie Guan†, Ruchong Chen†, Wei Wang†, Jianfu Li, Ke Xu, Caichen Li, Qing Ai, Weixiang Lu, Hengrui Liang, Shiyue Li, *Jianxing He‡ Lancet Oncology, Published Online February 14, 2020
https://doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30096-6


 これらの結果から、中国のグループは補助化学療法や待機的な手術は延期することが望ましいと述べています。また、がん患者ではアルコール消毒、手洗い、うがい、マスクなど一層厳重な感染対策が必要であり、がん患者に感染が疑われる場合は、より広い(緩やかな)PCR検査の適応を考慮することや、早期の治療介入が必要であると述べています。

 いずれにしても上記の中国での報告は感染が地域に蔓延し、医療崩壊と呼べるほどの状況下での感染であることを考慮する必要があります。Situation Noteでも明らかですが、現在のわが国における感染の状況は、最も懸念される東京都の状況でも、中国やイタリア(アメリカやドイツ)の状況とは異なっています。治療中の肉腫患者様や肉腫の既往のある患者様で感染が疑われる場合は、PCR検査の適応をより拡大し、早期の検査、診断により、重症化・重篤化を防ぐ体制が必要と思われます。




Q. 肉腫患者です。例えば、亀田総合病院での肉腫患者の受け入れ状況はいかがでしょうか。


A. 亀田総合病院では、肉腫総合治療センターの肉腫科で通常通り、初診、再診、セカンドオピニオンの患者様を受け入れています。肉腫の外科手術は腫瘍外科と泌尿器科で毎週行われています。2週間以内に発熱、呼吸器症状、味覚・嗅覚異常、結膜炎等がある患者様は必ず事前に電話で肉腫科に連絡してください。外来受診時には体温の計測と問診があり、来院時発熱のある患者様は外来に併設されている発熱外来を受診していただくことになります。




Q. 肉腫患者です。新型コロナウイルスに対する個人個人の感染対策で気を付けるポイントを教えて下さい。


A. 新型コロナウイルスは金属やプラスチックの表面で72時間程度生存することが米国の研究者らによって明らかにされました。この結果は、このウイルスに感染しないためには、いわゆる「3密=密閉、密集、密接」を避けてヒトからヒトへの感染に注意するだけでは不十分であることを意味しています。すなわち「モノ」からヒトへの感染防止も必要であることを示しています。不特定多数のヒトが触る「モノ」に不用意に手を触れないこと、アルコールの除菌スプレーかウェットティッシュで「モノ」を拭くか、触った手をこまめに洗ったり、消毒することが重要になります。また、手で顔を触らないようにすることも大切です。実際、ある医療センターでの院内感染では、カルテ入力に使うタブレット端末などの「モノ」を介した医療従事者間の感染が起こったことが推定されています。ヒトからヒトへの感染予防にはマスクの着用が役立ちます。相手にも必ずマスクの着用を求めましょう。


【参考文献】
Neeltje van Doremalen et al. N Engl J Med 2020; 382:1564-1567 (April 16, 2020).






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